父が書いた詩/岡部淳太郎
 
のだろうか。以上の二篇の詩に加え、最後に俳句が四つ。


春泥を浴びてここにも翁草


いづこより来て啼く鳥ぞ深山雪


この湖に鶴とんで舞え世界一


寒雀ここに来て見よ粟の粥

 これが発見されたもののすべてである。文語から口語に変わりつつある時代の、抒情詩の影響を受けているものと思われる。だが、父は谷川俊太郎や大岡信と同年の生まれなので、やや時代に乗り遅れた感がある。これらの大詩人の初期作品とくらべてみても、父が書いたものがいかに古色蒼然としたものか、ひと目でわかる。
 父がかつて本当に詩を書いていたのなら、父はいまの僕のことをどう思っているのだろうか。僕
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