父が書いた詩/岡部淳太郎
このかすかな自由をも打ちくだく
大地はこれを見、聞き、而してもくしていた
空には月が輝き、星が笑つていた
遠く近く弱く強く万古不滅に
太陽は絶ゆる事なく照りつける
土地は大きく裂け耕すべき土もなく
休むべき木蔭なく河には飲すべき
一滴の水もない
かくして彼等の唯一の同情者の上に
肉体と肉体の目をそむけん惨虐と
斗争の大絵巻
一匹の猫は数百のねずみに噛み殺される
血は喉をうるほし肉は飢を満たすのだ
一と十 十と百 そして最後の二人は
かみあったままばつたりと打ちふした
骨の山と血の池
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