父が書いた詩/岡部淳太郎
 

   このかすかな自由をも打ちくだく
大地はこれを見、聞き、而してもくしていた
   空には月が輝き、星が笑つていた
遠く近く弱く強く万古不滅に

太陽は絶ゆる事なく照りつける
   土地は大きく裂け耕すべき土もなく
    休むべき木蔭なく河には飲すべき
          一滴の水もない
かくして彼等の唯一の同情者の上に
   肉体と肉体の目をそむけん惨虐と
    斗争の大絵巻
一匹の猫は数百のねずみに噛み殺される
   血は喉をうるほし肉は飢を満たすのだ
一と十 十と百 そして最後の二人は
   かみあったままばつたりと打ちふした
    骨の山と血の池
[次のページ]
戻る   Point(6)