父が書いた詩/岡部淳太郎
 
ゆく

今宵もうるむ灯影は
激しい情を含んで
ゆらめかずまたたかず
愛の光を
  平和に流している}
 これは「渚の灯」と題された一篇。正統派の抒情詩という印象である。つづいて、これよりも長い「富士山」と題された詩。


{引用=彼は倣然と立つ 彼は支配者なのだ
   彼の男らしい征服者の
    輝かしいマスクを仰ぐ
哀れなる民衆は彼の威容におびえつつ
   夜となく昼となく
    小休みもなく働きつづける
彼等の同情者は大地のみ
   彼等は小声でこう大地に呼びかける
    仲間よ同胞よ運命がなんだと小さな声で
すると忽ち彼のあらしはヒュ―と鳴って

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