父が書いた詩/岡部淳太郎
 
の詩が書き写されていたからだ。
 何はともあれ、僕の父が書いたと思われる詩を紹介しよう。発見されたのは、詩が二篇と俳句が四つである。どれも同じB5サイズの無地の紙に手書きで書かれている。いったいどれぐらいの歳月が流れているのだろうか、その紙片は茶色く汚れている。


{引用=火一つ
寒村の堤の上に光を流している

夕闇迫り雲重く
白々しい渚にくずれる波の
冷酷のしぶきが灯影に散る

独りじやく然として四囲をあきらめ
遠く暗黒の海にさまよう
いさり舟の尊い生命の灯となり
はてしなき旅路にさすらふ
人の子の郷愁を
やさしくかき抱く灯の輝きに
私はじつとなごみこんでゆく
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