そうしてぼくはランナーとして/天野茂典
父と子は走った
父はバイクで
そうしてぼくはランナーとして
伴走してくれる父の後についていった
中学校のマラソン大会で
ぼくはびりの方だった
帰ってくるランナーに女子が拍手してくれるのだが
その中にぼくの好きな子がいたのだ
ぶっ倒れそうになって戻ってくると
ゴールの手前に陣取って
彼女はいた
かっこ悪かった
情けなかった
ぼくはこの屈辱を目指すため
長距離を練習することに決めた
コーチは父だ
父についてぼくは
街の中を
郊外を走った
毎日のようにだ
父のコーチを受ける前にぼく
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