最後の発明その発光・わたしはかなしかった/初谷むい
 
ちろと炎としての輪郭を見せている。液体が鍋に投入される音。一体何なのだろう。わたしたちはいったい何を食べるのだろう。

「二人鍋で食中毒になったら心中みたい」

「べつにお前とは死にたくないよ。そういうの入れたの?」

「入れてない、安全鍋」

彼がくくっと笑う。わたしもえへえへ笑う。鍋、任せてごめんね、と言う。別にいいよ、と彼が言う。

「全部入れたから、蓋するよ」

ぐつぐつと言う音が不意に低くなる。部屋の空気もだんだんと煮詰まり、お互いの呼吸音が無限に反射する。



思い出話の中に、発明品のことは出てこなかった。



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彼が彼
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