最後の発明その発光・わたしはかなしかった/初谷むい
が彼の発明品を燃やしたその日、おそらく彼の不安定はピークに達した。わたしにとって彼はすばらしい科学者でなければならないのだと彼は信じていた。だからそうでなくなった途端に、わたしが自分から離れていくと思った。それは恋心の終わりであり、同時に裏切りであった。わたしは想像する。あの夜。帰りのこと。彼は石油ですこしぬれた手でわたしの手首に触れた。ひんやりと湿った彼の瞳を見た。直後、スローモーションのように彼が手に持っていたなにか硬い、たぶん金属工具の類でわたしの頭を殴った。鈍痛の中わたしは目をつむった。殺される、とは不思議と思わなかった。力の抜けたわたしを彼は地面へ寝かせ、少しの荒い呼吸音のあと、左手、親
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