最後の発明その発光・わたしはかなしかった/初谷むい
、彼は部屋でゆるゆるとものを浮かせながら、これはあまり人には言わない方がいいものだと感じていた。そしてそもそも、彼は科学者よりも詩や小説を書く大人になりたかった。あるときからヒロサキユウゴがは科学をやめた。決心をした彼はある年のクリスマス、ありとあらゆる発見や発明品をガソリンスタンドの跡地で泣きながら焼いた。かなり寒い冬の夜だった。灯油の匂い、照らされるぬれた横顔。それを見ていたのがわたしだった。彼の発明をよろこび、彼の浮かせたポテトチップスをかじったのがわたしだった。きっかけは簡単で、放課後の教室、小学校の同じクラスだったわたしが彼の机の上にあったぴかぴかするボールを落としたことだった。落下した
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