最後の発明その発光・わたしはかなしかった/初谷むい
メリークリスマス、という言葉を二十四日に使うべきか二十五日に使うべきかわからないままに二十歳になってしまったわたしはそんな簡単なことも人に聞けないようなかわいい女の子でしかも処女で、二十四日の浮かれた夜を結局「メリークリスマス?」と誰にも言えないで歩いていた。回数を忘れるくらいに口に出したおかげでばっちり覚えている住所、そこに住む眉毛のかたちがきれいな男の人、その人に会うための服と化粧と靴と鞄をガラスの反射で確認しながら胸の高鳴りを確認する。ああ、ヒロサキユウゴのうちがすぐそこにある!ヒロサキユウゴの最寄りのセブンイレブン!生存への感動で息をするときに「ひゅっ」と実体のある音がする。わたしは凡庸な
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