うみのほね/田中修子
覚ますと、空っぽの本棚を眺めて、どんな本が入っていたのだろう、真さんはどんな本が好きなんだろう考える。親に、絵本を読んでもらった。そういえば学校で、教科書、も配られた。
なんでうまく思い出せないのだろう。ほんとうに、頭が悪くなってしまったんだ。
それでも一生懸命考える。真さんが好きなのは、多分難しいけれど綺麗な文章の本だ。お話を考えるけれど、すぐにこんがらがっておはなし、ってなんなんだか分からなくなり、いつも思考を手放してしまい、ぼんやり優しい時間に身を任す。
時たまこの階層にまでやってきた雲から雨が降る。となりの棟との細い隙間に銀色にひかる雨がしたたり落ちてくると、コップを突き出してそ
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