うみのほね/田中修子
 
たたまれない気持ちになる。晴れでもない、雨でもない。中途半端な私みたい。
少しでも気持ちを良くするために、私はとっておきの白いブラウス(でも、もう襟のところがだいぶ薄汚れている)を着て出かけた。
 一時間くらい歩くと、街はスラムからビジネス街へと劇的な変化を遂げる。この国には、建物が多すぎる。人も。
 街の中には黒や灰色のスーツをきちんと着こなした大人たちが忙しく行き来していて、まるで蟻の巣だった。一人だけ汚れたブラウスでのろのろ歩いている私は鳩のフン、街の染みみたいだ。染みは思う。人工的なビル街は、高慢な表情がきれいだな、と。鋭利な線で繋がれて構成され、不遜な態度で空を切り取っている。

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