モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
丈夫だよ」
と言った。
みやちゃんはゆっくり目を細めて、ゆっくりと「うん。そうだね」と言った。
対岸の、ひとが住んでいないみたいに見える街に、山陰の向こう側を回って玩具みたいな電車が走ってきていた。まるで耳鳴りの心象風景みたいに陰気な街で、赤い電波塔さえ灰色に見える。
欄干から伸びた鉄骨が僕たちの頭上で交差していて、その上を黒い鳥が何羽か飛んでいた。
音階を辿るように下降してきた空の下で、僕たちは手を繋いだ。日光の斑点が歩道にぼんやりと溶けていった。
18
いつかの朝。
蜘蛛や風や蒼空のために詩が書けたら素敵だろうな。
ロヒプノールとコーヒー、ラッキー・ストライ
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