モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 



あらゆるものが大きすぎる、と思うことがある。空想の中で僕はあらゆるものを内包することが出来る。空想の円環の中で、僕はひどく内気で、また残酷になる。恥ずかしさと、懐かしさとを混同しそうになる

妄想、妄想、理想の家を、頭の中に造るのは楽しい。実際、かなり細かいところまで造っています。老いていくのが、楽しい、かも知れない。金の飴によって絡め取られたかのような風景。鋳鉄の複雑な模様の枠のあるベッド、いや、シンプルな木枠のベッドがいいかな、体を横たえると軽くきしむような。カーテンは透き通るようなガーゼで出来ているんだけど、僕がよく煙草を吸うので少し黄ばんでいる。それで窓から差し込む太陽の色
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