モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
のか、それさえも定かでは無い。煙草と、ウィスキーと、腫れ上がってまた治まった声帯の晴れがましい所業。
ただ、ロボットだけはいつも通りの、感じのいいクールな笑みを浮かべていた。
「そう、計画だ。私は、いつまでも生きているわけにはいかない」
そう言って、ロボットは、右手に持ったマッチを膝の上で擦って、その火を数拍眺めてから、口にくわえたマルボロに火を移した。それから、火の消えたマッチを、食べた。
「君は、よく墨を食べるね」
「うむ。ロボット的に原始的な記憶がそれを煽るのだよ」
そう言って、ロボットはジョニー・ウォーカーの瓶を逆さにした。
「私は、君より先に死のうと思うんだ」
「何を急に
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