モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
。そのために、ゆっくりと歳を取っていくことを、私は肯定する。何故、苦しみはあるのだろう。苦しみの無い生なんて、想像も出来ないけどね。まるで追い立てられるようにして。生きてる。
*
「計画を立ててみないか」
ロボットが言った。現実的に、よく通る声で。部屋のスピーカーからは、ジム・ホールのオン・ザ・ロックにしたらよく合いそうな、ギターが流れている。
「計画?」
僕の声は嗄れていて、まるで、神話の時代からほったらかしにされていた窓ガラスを思わせた。というのも、記憶にある限り、僕が何か言葉を発したのは、今の瓶を空にする、その前の前くらいのことで、いつ眠ったのか、そもそもいま僕は起きているのか
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