モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
しばらく上の空のような表情を作っていたが、しばらくして「そうする」とまた意外にもあっさりと答えた。それからまた怯えたような表情で周りを見渡していた。私は、真弓の母親と思わしき女の人に向き直り「こんにちは」と言い、「葉山みちると言います。真弓さんはお友だちです」と言うと、「お友だち」と言う言葉に喜んだように、母親は頬の辺りを緩め、「そう。それじゃ真弓をお願いして宜しいかしら」と言った。「お願い」という言葉の意味が量りかねたけれど、私は「ええ、お構いなく」と優等生的な笑みを作って答えた。』
ミチルの診察はすぐに終わり、私達は連れだって、病院の隣にある薬局に入った。私は、『デパケン』という薬を二
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