モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
れから、ママが気を利かせたつもりなのか、牛乳なんかを出してきたときには、私はそれをあの女の幾ら整えても汚いゴキブリの触手みたいな頭部にぶちまけてやりたくなる、そんなとき。私はこの女と訣別して、専業作家になれたらどうだろうと思う。そのために用意する独居アパートの間取りまで、私には手に取るように思い浮かべられる。しかし私はそれをしない。なぜなら私はママが嫌いだからだ。
……昨日、図書館で出会った女の子のこと。私は制服をあげると申し出た。何ならこの場で交換しようと。あの子、真弓は躊躇して、それから「そんなこと出来るわけ無い」と言った。何を根拠に? あの子は明らかに私の制服を欲しがっていたし、あの子の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)