モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
味なのだ。あいつは、私の母を、私とあいつの共通の敵に仕立て上げて、私と「親身」になろうとしているのだ。多分、幾分、いや、ほとんどの動機は下心だろう。私は、「何もかもうまくいっているというわけではありません。でも、普通だと思います」と言った。S川は曖昧に頷き、それから落胆したように、「何かあったら」「先生は味方だからね」とお決まりの台詞を繰り返した。
しかし実際問題として、家庭環境は最悪だ。母は母で、私の態度を学校のせいにしている。ちょっとした(たとえば生理中の苛つきによる)私の口答えでさえも、「学校に問題があるからだ」と思いこんでいる。思いこもうとしている。』
そこでミチルは、いったん手を
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