モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
少しはみ出て笑っていればいいのです。訳の分からない不安は、多分つつくと粘着質を増す性質のものであります。
存在の狭さに腕を絡ませて、眼鏡をかけて蕭々とします。頭の中のシステムが暴発して僕に死ねと言います。僕はそれに抗うどころか、次第に死と親しくなっていくようです。

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……『私は実際問題として死ぬわけにはいかない』
 ミチルは淡々とキーボードを打つ。その表情には、嘆願するような、ディスプレイを見つめれば、そこに究極の答えが書かれているのではないか、というような、強い渇望と、それ故の絶望感が見てとれた。
『今朝、と言っても、起きたのがお昼の五時だから、もう夕方ね。クスリが切れた。私の
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