モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
く開いたカーテンの向こうの向こうの向こうの方に白くてふっくらとした半円状の月が見えます。黒い山の向こうからもやもやと天の川が流れてきます。読みかけの朔太郎と、題名のない本、積み上げられた本を順々に取り上げて、壁に投げつけたい気分です。何も考えることなく、誰もいない街に移行して、月明かりで発電して、ジャック・ホワイトのドキュメンタリーをぼんやりと見ていたいです。天国です。どこだって天国になるんです。笑っていられれば。うるせえよお前と言われても、だから? だから何だよ? って言い返せれば。そう、そしてもう一音を、死ぬ前にもう一音を、アンコール! ONE MORE NOTE!
*真昼、薬缶の中
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