モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
いんだ。もはや僕には分からないのかも知れないし、そんなのは幻想だと言われればそうなんだろう、ね、でも、そういうものが確かにあるといいと思ったものは、やっぱりあった方がいいんだよ、測りかねるもの、そう、そ、ら、空、とか、海とか太陽とかは、僕、ぼく、は、分かってしまってはいけないんだ、けれどもね、僕が、そうだね、甘えてるだとか、あっさり切り捨てられるのも、それは違う、違う、ちがう、わけじゃないんだ、何というか、それは、もう、とっても正しい」
 ごとごとと低い音がしている。それが窓の外からの自然音なのかまた人為的なものなのか、機械音なのか、それとも僕自身が立てている音なのか、僕には、分からない。善意で
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