モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
綻の誘惑に負けてしまうだろうが、私自身の破綻などそのうちに問題にならなくなる、だろう。ゆっくりと水を飲むこと。熱に臥せっている幼子のように。何が私の安寧を脅かすのか、掴めない。風景があまりな透明度を持って、私の網膜をすり抜けて脳髄を直接刺すような感じ。私を脅かすのは、まったく、眠気や堕落ではないのだ。欠落、何も見てはいないのだ。何も見てはいけないのだ。破滅的なものには興味だけでは済まない求心力があるから。自分を保っていられない。燃え尽きてしまいたい衝動。ひとつの有機体として、すべてを燃やし尽くしてしまう。


そのようなものを、ノイズという。ここが私の故郷にして墓場。空をきれいに磨く。もう
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