モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
ても、多分インスピレーションなんかには出会えない。ただ、の、感情に過ぎない。ただの、傾向。だから、理由を聞かれるのが嫌で、もう医者には多分死にたいとは言わない。死にたさを括弧付きの死にたさとしてしか受け入れてくれないひとに共感を求めてもしようがない。先生は決して悪い人ではないし、まともだし、好きなひとではあるけど。でも、痛みを訴えるひとに麻酔無しに解剖を施すようなひとは医者とは言えない。空は不安げに光り、鳥は不安げに鳴く。不安を拭えば真新しい懐かしい不安が顔を見せる。誘惑とか逃亡とか、うねり、危険なもの。私はいずれ全てを無くしてしまえるだろう。私の思いは果たされるだろう。私は破綻するだろう。破綻の
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