モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
節のせいでしょう」。医者の話は長い。私の心を解析しないで欲しい。そんなの、なんの、ため、にもならない。あらゆる結果には原因がある、としても、それはシステマティックにルール化されたゲームの中でのことだけだ。私の慢性的な不穏に理由なんて無い。もし「この頃つとに死にたくなったんです」と言ったとして、「どうしてでしょう。何か思い当たることはありますか」と聞かれても、苦しまぎれに「季節のせい、でしょうかね」とでも答えるしかないのだ。「季節の変わり目は精神にも不調をきたしやすいですから」とかなんとか言われて、「しばらくゆっくりしてください」で終わりだ。暗い気分は、奥深いものでも何でもないし、そこを掘り下げても
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