モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
無感動です。ずっと雨の音ばかりを聞いていて、それが無駄なことにも思えないんです。もう、僕が死にたいのは分かったから、せめてそれを忘れさせてよ、と自分に向かって。でも僕はヒューマニティに溢れてはいないので、快活な僕を僕の奴隷とする。煙草を吸うために煙草を吸う。完全に打ちのめされてしまうまで、自分を試す。例えば、あるだけの薬を飲み、あるだけの煙草を吸って、気を失うまで起きていて、あるだけのお金を使って、いや違うな、退屈なんじゃないんです、もちろんそんなんじゃなくて、自分がへらぺったい壁画みたいで、「例えば僕はこうで」「例えばあれが僕で」が判読し難い記号のように続いて、結局のところ僕はとっくに死んでいる
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