モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
とえばそれをきれいと思ったり。
いなくなったものが。
いなくなったものが、ああ、(なにもかもがどっかにいってさ)、
どっかにいってさ、
わたしは心だけで歩いていました。

好きなものを好き、嫌いなものを嫌い、と言いながら、老いていくのですよ。死ぬ前には多分世界の全てを好きになる。

いっぱい、いっぱい食べる。どうせみんな出てしまうものだから、味さえわかればいい。ジャムを掬って食べる。ジャムを食べる。私は病名をもらう。私はそうですかと言って入院する。

「僕は、13歳の頃から詩を書いている。いや、わからないな。どうだっていい。ただ僕は魅せられ続けた。それは、死者の目に映るものだっ
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