モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
覚をなぞるようにして書いている。僕は自分がワードプロセッサーの一部として上手く指が機能していることに快感を感じるのだ。他に何がいる?人間を他の動物と分けるもの。人間だけがデフォルト状態で不安なのだ。僕は毎朝起きる度に欠落を実感している。それは夜になっても埋め合わされることがない。朝僕を支配する空虚感が次の行動へと僕を駆り立てることないからだ。ただ、行動することだ。よく、言われているよね。とりあえず行動してみたら? とりあえず行動できる人は、人の助けなんていらない。僕たちのイグニッションキーは壊れているか、鍵がない。だから、待つともなく、結局は怠惰という状態で一日日頃を過ごす以外に選択肢なんて無かっ
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