モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
いくら壊れたって構わないんだよ。大事な部分は、いつまでたっても君のままだよ、コウくん」

 穏謐な灰色の建物の裏を、いつだか歩いていると、とがりネズミに会った。
「君が今まで殺してきた人たちの名前を、僕はみんな列挙できる」とネズミは言った。
僕は誰ひとりとして殺してはいない。
「君が否定したとしても、君のオウムはそれを知っている。オウムは君の真似をする、僕の前で、君のやったことを随分悲惨に再現してくれた。君には好意が持てない」
「それでも多分、そのオウムは嘘付きなんだ。僕の真後ろにいて、いつも意味の分からないことばかりを言っていた、あのオウムだろう?」
「意味が分からないんじゃない。
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