モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
僕にもたらす刺激は少ない。二面、三面になるほど、刺激は稀薄となり、それは空気中のダストのように清浄すべきアレルギーのように僕の頭に棲み着く。しかし、僕はそれなりに大きな街で生きる社会人、つまりニートではない人間として、必要、本当に最低限の情報だけを自分の海馬を通すことにしているのだ。それには、よくわからない、必然性、強迫性のようなものが介在している。「解放しなさい」江井ノさんは囁いた。僕に足りないのは衝動性だと江井ノさんは言った。衝動性ならありすぎるくらいあります、それはどういうものですか、と僕が言うと、自分を解放することだよ、と彼女は答えた。「君は少し、自分を崩すのがいいんじゃないかと思う。いく
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