モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
きる限りには、僕にはそれを検証すべき責務があるような気もするよ。楽しい話がしたいんだ。ただ。楽しい話がしたいんだ。でも、僕の言葉は通じているのかな、便宜的に選ばれた言葉の向こうにあるものを、果たして僕は正確に把握できるだろうか、また、そうする理由はあるだろうか。輪郭をなぞり合っているに過ぎないのに、僕たちは、それをわかり合っているということが出来るのだろうか。ああ、僕はハイになりたい。ハイになりたいんだ」
江井ノさんから電話がかかってきたのは、僕が、今日のノルマの分、毎日新聞の紙面一面、それから村上春樹の「ねじ巻き鳥クロニクル」の二巻をちょうど読み終えようとしていたところだった。情報が僕に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)