一度食べかけて、また吐く/由比良 倖
 
と台所用洗剤で、真っ白になるまで磨き落としてしまった。それから、使いかけのかつお節パックとか、紅茶の葉とか、賞味期限切れのあらゆるソース類を容赦なく処分してしまった。それが、とても清潔そうに見えたので僕は気に入って、ビール以外の食材を、結局はほとんどみんな捨ててしまった。憧れの無機的な生活に近づけた、という思いがふと湧いて僕は笑う。僕はハイネケンを一本取り出して、冷蔵庫を閉じる。ドアを閉めると、中でからからと音がする。冷蔵庫の扉は、分厚くなくてはいけない。白黒の時代には……そう、あの頃は何もかも白黒で、断続的な動きを人々はしていて、みな困ったように笑っている。お婆さんたちが子供だった頃……、冷蔵庫
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