一度食べかけて、また吐く/由比良 倖
て、それから「実は天使なんていません。僕はとびら」と答えた。
「とびら?」
「そう。ドアの扉です。あなたは?」
「僕は、えっと、よく分からない」
「それじゃあ」と言って、電話の主はきゅっと沈黙を発して、「たとえば、ひつじさんと呼んでもいいでしょうか」と提案した。
僕は、「君がいいならいいよ」、と答えた。扉はすぅっと息を吸って、
「今朝、指を切ったのです。もう四時間くらい、血が流れているんですよ。おかしいですよね。明日になったら、僕、死んでるかも知れない。そしたらね、お墓が、白くてぴかぴかで、石なんかじゃないお墓が欲しいんです。例えばディスプレイ素材で、そこに点滅するDOOR.っていう
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