一度食べかけて、また吐く/由比良 倖
 
いた。もう一度、柱に目を向けると、「聡明なる天使があなたをお迎え致しますTel→」その先に八桁の番号が書かれていて、僕はそれを頭に上書きした。
「ねえ、おじさん」
 少年は、今の間に僕が何か致命的な悪さをしたのを見とがめるような目で、僕を見ていた。
「あんた、なんか馬鹿みたいだよ」
 彼はそれだけ言うと、黒なのか青なのかよく分からないコートの背をくるりと向けて、去っていってしまった。

 僕が家に帰ると僕の身体は先に帰っていて、部屋の中は真っ暗で、僕の身体は毛布にくるまって苦しそうな顔をしていた。僕は僕の身体に追いつき、途端、鮮烈な痛みが爪先から、頭蓋骨を貫いた。痛い、痛い、何だこれ、
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