吉野(その三)/tonpekep
ことが唯一の目的になるという展開になってしまった。
すれ違う人たちはとても軽やかに山を下りてくる。上ると下りるではこうも違うものか。
女の人、それもかなり年配のように思える人たちが楽しそうに下りてくるのを見て、この人たちにはどうしてこんな体力があるのかと、自分の体力が情けなかった。ただ、妙に服装が観光的で、この山を上ってきたにしては疲労感が出ていない。若い女性の中にはハイヒールを履いている人さえいた。僕達の状態と下りてくる人の状態があまりに違いすぎた。
「もしかして、これ。上まで行くバスとかあるんじゃない?」
後で分かったことだが、おくせんぼんの金峯神社の前までバスがあって、そこか
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