レモンジュース・ダイアリー(2)/由比良 倖
 
活にずっと馴染めるのだと思った。それは正しかった。街の方で作られるギターは、大体はギターではなく、針金を巻いた杖と棺桶を合わせたようなものだから。
私はまだ冷めていない紅茶を飲み干して、席を立った。日が暮れないうちに彼にギターを届けよう。私は白いショールを羽織って、ギターケースを抱えた。沈黙が和音を奏でていた。彼は仕事が捗っているだろうか?

部屋を出るとホールの中では沈黙の和音の中に誰かの喋る声が密やかに響いてきた。ギターが彼に出会うことで音楽は終曲するのではないかと思い、私は踏み出しかけた足を躊躇い、爪先で床に混乱した線を引いた。すると和音の中にもうひとつの対旋律が流れ始める。それは私を
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