レモンジュース・ダイアリー(2)/由比良 倖
私をいつしか歩くことへと誘うような回る風の旋律だった。私には街から流れてくる電子音が彼の網膜から、沈黙を介して指先へと、それからこの白いギターへと、それからディスプレイを通って、街の光へと、それから影の無風地帯を通り、ディスプレイへと、それがこの沈黙へとまた帰ってきて、それが風となり全ての音楽へと移り変わっていくのを、青いケースのギターが私を彼のもとへと歩ませるのを感じた。私は歩き始め、空気を吸うとそれが歌になっていき、早足になるほどに私はとめどなく満たされていった。
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