吉野(その二)/tonpekep
 


現代で例えるなら、リストラでやって来た見どころのある男を部長待遇で雇ってやったら、いつの間にか会社経営を握られて、挙げ句の果てに会社を乗っ取られてしまった間抜けな経営者みたいな感がある。

蔵王堂から勝手神社に向かうと、そこは門前町の賑わいで、道の両側には軒を争うようにして店が並んでいる。花見の時節柄、吉野の商いは人でごった返している。中には中古の鞄を売っている店もあった。一ヶ500円とある。何を売るのも人の勝手だが、少しこの名所にはそぐわない感じがして面白かった。

花道を行く。ひらひらと落ちてくる桜の花で、道は化粧をした女のように、匂うように溢れ返っている。勝手神社の前に来る
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