吉野(その二)/tonpekep
 
来ると、大きな看板のようなものがあって、そこに静御前の神社と大きく書かれていた。勝手神社には袖振りの伝説がある。

大海人皇子の奏でる琴線に感じ入り、天女が袖をひるがえして舞ったという伝説があり、義経と別れた静御前が追手に捕らえられたとき、請われて舞いを舞ったという伝説がある。義経の時代には大海人と天女の物語があったことを思えば、おそらく追手の誰かがその話を知っていたのか。或いは神主からその話を聞いて感じ入ったか、当時一流の舞子として有名であった義経の妻、静にリメイクさせたい衝動にかられたプロデューサーみたいな指揮官でもいたのだろう。リメイクした静の舞いは、義経の悲劇性も功を奏して見事に現代でも語りぐさになっている。
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