吉野(その一)/tonpekep
 
咲けるさくら花雪かとのみぞあやまたれける(紀友則)
こえぬ間は吉野の山のさくら花ひとづてにのみ聞きわたるかな(紀貫之)

吉野は、平安時代に編まれた古今和歌集に既に桜の名所として詠われている。後、西行法師、松尾芭蕉など多くの文人墨客が吉野の花をこよなく愛した。
現在、全国各地のほとんどの桜の名所は、ソメイヨシノといわれる桜が植えられているが、これは江戸の時代に江戸染井町の植木屋さんが作り出した品種で、吉野の桜のように美しい桜、という意味で名付けられた。ただ、吉野の桜の殆どはシロヤマザクラである。

近鉄吉野線の終点が吉野である。僕はこの関西に住んで何十年にもなるというのに、一度も吉野の
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