褐色の濃いあたりに/深水遊脚
を楽しむ遊び心からか。
「名前も名乗らず不躾にごめんなさい。私は深沢みのるといいます」
「私は倉橋いつきです。お店ではよくお会いしますね」
そんな会話のあとお店の話、珈琲の話などをした。言葉の接続が徐々に滑らかになっていく感覚だった。マスターの思惑通り、計量したまま置いたルワンダは無駄にはならず、彼女が購入した。なにも聞かないうちからパッキングまで終えていた。
軽い会釈のあとカウンターの2つとなりの席に座った。お互い静かに過ごすことが好きなのは言葉を交わす前から知っている。彼女のぶんの余白をあけるために、詩集を選んで読み始めた。倉橋さんはタブレットの上に指を滑らせていた。
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