褐色の濃いあたりに/深水遊脚
 
てそれだけで満たされて暮らしたいと思うのに、本当に必要でお金を出していいと思えるものがわからないのだ。今更自分探しを始めようと悠長なことはいえないし第一かけるお金がない。詩でも読もうかと思って手にした雑誌では、頑固じじい気取りの批評家があれはダメこれはダメと貶している。いいことばかり言えばいいというわけではないのはわかる。何も考えていない誉め言葉というのもあるのだ。いま街に溢れている飾りつけやイルミネーションのように。でも何も考えていない貶し言葉というのもある。

 過剰な音を避けたいときいつも入る喫茶店があった。珈琲しか出さない、ごく小さなお店だった。この時期はクリスマスツリーを飾っているの
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