地と水/あおい満月
声をたよりに、森の奥へ奥へと入っていく。途中、道が道ではなくなっているのに気がつく。そこは、限りなく赤かった。ひたひたと、足元が濡れている。地面に指を触れさせると、冷たいよりも生ぬるかった。指についた赤い透明の液体はどこか鉄に似たにおいがした。異様に暑かった。まるで自分の体内に閉じ込められてしまったように、八方塞がりな気だるさが進む足の邪魔をした。声はまだ響いている。思わず足を止めた。大きな口をした穴が、人間の背中を飲み込んでいた。
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あなたは、必死にもがいていた。あなたの長い髪を口は咀嚼し、両腕は傷だらけだった。渾身の力を振り絞り、あなたを穴から引き出す。息が荒いあなたは、吐
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