地と水/あおい満月
、吐き気を訴え、あなたを呑み込もうとした口さながらの大きな口で吐瀉物を吐き出す。吐瀉物は洪水になって、あなたの毛穴という毛穴から音を立てて流れてくる。あなたが吐き出したものは、魚だった。小さなさかなたち。どれも死んでいるような、まだ生きているような、曖昧な目をして宙を仰いでいる。さかなの目を覗きこむと、そこに水面に映りこむ迷路があった。手を伸ばす。階段に引き込まれる。
***
あてもなく、暗い階段を降りていく。
あなたは水を飲む。上下する咽喉のリズムと、階段をくだるリズムが比例する。あなたが飲んだ水たちは、あなたの喉をすり抜け内蔵を通り、やがて血の海へと旅をはじめる。あてもなくくだり
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