扉の向こう側/小川麻由美
 
そこに木々と池のある日本庭園の風景が広がった。
上流階級らしき婦人達が身分の高い方が好きな庭園だから観に来たと言うのだ。
揃いも揃って、貴婦人達は厚化粧である。
特に紅などは、ピジョン・ブラッドの色で
指輪までピジョン・ブラッドのルビーを付けている。
鳩にとっては、いい迷惑かもしれない。
一本の矢が刺さった鳩がいた。
それこそ、聖セバスチャンの耳元で、矢について聞きたくなった私である。

厳密に言えば現実世界に一本の直線は存在しない。
しかしながら、直線を表現したいと思った私は
母校の小学校へ赴き、体育倉庫から無断で道具を拝借し
石灰でもって、グラウンドの端から端まで慎重
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