赤いぼろきれと蜘蛛/田中修子
したとき、こじきの女の子は心をおしまいにしました。
「もう、あたしに人はいらないわ。動物もいらないわ。みんなダメになっていった」
家の中にいるはえとり蜘蛛に、名前をつけました。はつ恋の人の、名前です。
洗面台の子は特にお気に入りです。
「お前は大きくおなり、何も考えず、大きくおなり」
さて、どうやってはえとり蜘蛛を大きくするか。
ひさしぶりに、こじきの女の子の心が躍ります。
「この町でいちばん頭のいいものに、育て方を聞きに行こう」
こじきの女の子は、たゆたうように、夜の町に出ました。眠たげに、こっくりこっくりと、頭がゆれています。
町長さんの家にき
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