赤いぼろきれと蜘蛛/田中修子
している)
「お前はそのまま、大きくおなり」
むしゃむしゃ、むしゃむしゃ。
(僕はあなたを幸せにしたい)
「お前はこのまま、大きくおなり」
ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ。
はえとり蜘蛛が、部屋のすみの埃や、椅子、こじきの女の子の背を越える日がやってきました。
そうやってどんなに大きくなっても、愛し合うことはできないと気付いたとき、
「僕はもうすぐ死に、生まれ変わって人になり、あなたを幸せにします、さようなら」
はえとり蜘蛛は、そう告げました。
「お前は、お前のままでいいのに!」
悲鳴でした。
それが、はじめてで最後の、はえとり蜘蛛とこじ
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