ドトールにて/高林 光
に、禿げかけた頭も、老眼鏡も、なぜか二種類あけられている違う銘柄の煙草も、すべてが意図をもって美しく見えてしまうから不思議だ。
絵を描けない僕は、無性にこういう姿に憧れるのだけれど、今、僕が読んでいる本が、相対性の罠に関する本だということに笑ってしまう。
そうか、僕は絵を描けないから、もしかしたらこの初老の男性がこんなにも美しく見えてしまうのかもしれない。
禿げた頭も、老眼鏡も、ただの禿げ頭と老眼鏡なのだ。頭には天井のダウンライトが反射しているし。
そう思って僕は、こうやってノートを広げてみた。この初老の男性だって、絵は描けるが詩は書けないに違いない。
だからきっと、彼もこ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)