ドトールにて/高林 光
もこうやってノートに何かを書いている僕を横目で見れば、美しく感じるに違いないだろう。なんせ僕は、禿げてもいなければ老眼鏡もかけていないのだから。
と、思いつつここまで書き進めたのだけれど、一つ大きな問題があることに気付いた。
僕はこうやって、彼をちらちら見ながら、時にはその美しさに憧れの気持ちすらもっているというのに、彼のほうは一向に僕に興味を示さない。ちらりとすら見ないで、目は開かれた本の写真とスケッチブックを行き来するだけだ。
自分のやっていることにどうしようもない無駄を感じると、忘れかけていた、コーヒーと煙草といろいろな行き違いのぐちゃぐちゃが、また胸やけになって僕に纏わりついてきた。
身の置き所に困って天井を見上げていると、不意に、この部屋の空調をぬって誰かが吸った煙草の匂いが僕まで届いた。
辺りを見回してみると、初老の男性が煙草に口をつけながら、僕を見ている。
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