洗面台から消えてゆく/043BLUE
ぼくは流れてゆく、洗面台から消えてゆく、洗面台の排水口から、少しづつ、消えてゆく、冷え切った蛇口と、無造作に放置された、石鹸の反目、ぼくの手は、今日も汚れてしまった、ぼくは石鹸で手を洗う、今日一日分の汚れを洗い流す、ぼくから引き剥がされた汚れによって、石鹸が不条理に汚れる、汚れてしまった石鹸を、ぼくの手が洗う、洗っているうちに、ぼくは手を洗っているのか、石鹸を洗っているのか、ますます、わからなくなってゆく、その間に、石鹸はぼくから分泌された穢れによって融解する、排水口の十字が、まるでその行方に宇宙が広がっているような、そのほんの入り口で、毛髪状のぼくの怨恨が、半年以上叫び続けている、冤罪にされた石
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)