洗面台から消えてゆく/043BLUE
 
た石鹸は、ぼく自身の手によって、消耗されてゆく、僕自身が汚れによって、同時多発的に、消耗されてゆくのと全く同じように、汚れを喪った僕は、まるで、僕自身を喪ったかのように、とても、うすい、とてもとてもうすいぼくは三葉虫の枕で眠りに着きながら、このまま朝になるまでに、冷たい布団の上で蒸発してしまいたいと、前頭葉で執拗に、執拗に反復する、だれにも気づかれずに、だれにもバレずに消えてゆきたい、この洗面台の、ブラックホールのような、すべてを許諾するこの排水口から、流出してゆく、僕自身を少しづつ、溶かしながら、毎日少しづつ、それはぼくが死人に近づくということ、それはぼくが、詩人に近づくということ、それはぼくがどうしようもなく、ぼくで在り続けるということ

戻る   Point(5)